「愛した女は風俗嬢」~彼女の素性と過去~

あなたの男としての器の大きさは? 
名作ドラマである北の国から~秘密~において、吉岡秀隆演じる純が、宮沢りえ演じるしゅうと恋に落ち、恋人になって以降、友人にあることを指摘される場面がある。曰く、「彼女はやめとけ」。

ネタバレしてしまうと、友人はしゅうが昔出演したAVを視たことがあり、事実を知った純はレンタルビデオ店に走り、愛するしゅうの過去のあられもない姿を目にしてしまう……。

さて、ここで本題である。

自分の妻や彼女は当然のことながら、自分と出会うまでの過去を持っている。その過去の中にはもちろん、良きものや悪しきもの、双方が存在することだろう。例えば前述したしゅうのように「元AV出演歴有」などは稀少かもしれないが、「風俗店勤務経験有」や「援助交際経験有」、プライベートでの「3P経験有」などは、十分にあり得ると考えておいた方が良い。

結婚したご主人に、終生ジャックのことを話さなかったタイタニックのローズのセリフではないが、女性というのは「海のように秘密を抱いているもの」なのだ。

理想の彼女が不意にできた!

彼女

4つ上の涼子とは某出会い系サイトで出会った。付き合って半年、それまで、工場での仕事仕事で何の楽しみもなかった26歳の僕の人生は、まさに激変したと言っていい。

毎晩遅くまでLINEや電話で話し、週末になると部屋に来ては、溜まっていた掃除や洗濯をし、美味しいご飯を作ってくれる彼女。

ちょっと顔とメイクは濃い目だけれど、低身長、ムッチリ体形、Fカップと、僕の理想通りの体型を持つ涼子を、この半年で一体何度抱いたことだろう?

いや、殆ど女性経験のなかった僕は、逆に彼女に「抱かれて」いたのかもしれない。

その艶めかしい舌遣い、吸引力抜群のバキュームフェラ、騎乗位においての激しい腰遣いは、風俗店でも経験したことがないほどのもので、この半年、1晩に4~5回発射したことが何度もあるほどだった。

(もうコイツなしじゃ生きていけない……)

昼も夜もかいがいしく、まめまめしく尽くしてくれる涼子。

何度も何度もキスをしてきて、隙をみては咥えて、激しくしゃぶり、イカせてくれる
涼子。そんな彼女に骨抜きにされてゆく自分を感じながら、それでも僕は「ある疑念」を拭い去れずにいた。

(このエロさ、技術の数々は、過去の彼氏に仕込まれたものなのか?それとも……)

涼子は都内郊外で実家暮らしをする、派遣のOLだ。家にも1度か2度、遊びに行ったことはあるが、お堅い中流家庭といった趣きの家だった。

1人娘の彼女は、音楽系の短大を卒業してから、大手楽器メーカーでピアノの講師を数年していたそうだ。でもあまりにお金にならないので辞め、派遣に転じたのだのだという。元カレのことはあまり話したがらないが、楽器メーカーにいた時に1人、派遣になってから1人はいたらしい。

出会い系をするようになったきっかけは、30歳になり、周囲が軒並み結婚してゆく中で焦りを感じたからだそうで、それで男漁りをしてきたというような感じでは全くなさそうだった。

「出会い系始めてすぐゆう君と出会えて、ほんとラッキーだったわ」

そんなことを言われると、胸の中にくすぶる疑念も消えそうになるもので、あの日が来るまで、僕は涼子と結婚することを考え始めていた。

そう、魔が差してネットサーフィンをしてしまうあの日が来るまでは……。

彼女の過去、否、素性を知る―――。

素性

ある週末、彼女は部屋に来なかった。

「体調が悪くて熱があるので、今週は家で寝てるね、ゴメン」とLINEでメッセージを1度よこしたっきり、その夜は音沙汰がなかったのだ。

(妙だな、体調が悪い時でもLINEは頻繁に来て、寝る前には電話があるのに……)

かつてないよそよそしさに、胸が騒めく。

疑念に駆り立てられた僕は、何気なしに、都内の人妻系の風俗店を片っ端から検索してみることにした。涼子の30歳という年齢を考えれば、在籍しているなら人妻店だろうと踏んだのだ。

検索条件を25~32歳と定め、胸のカップをF~Gにセットし、人妻系のホテヘル嬢を1人1人チェックしていくと、何とも呆気なく、彼女とおぼしき女性が見つかってしまった。

更にはストリップ的な自己紹介動画まで見つかり、声や体、ホクロの確認までもできてしまったのである。

(……顔は全部隠されているけど、間違いない、どう見てもこの乳首、この声は涼子だ……あり得ん……あり得んわぁ……)

ショックで言葉が出なかった。でもさらにとどめになったのは、何と本日、彼女が夕方~深夜までの出勤になっていることであった。

(確かめに行くしかないよな、こりゃあ、もう……)

源氏名「裕美」に予約を入れ、電車に揺られ、池袋方面へ赴く。

夜21時に某コンビニ前で待ち合わせをした2人は、時間通りに会い、東京の時間はその瞬間停まってしまった。目を見開いて「え……」と悲壮な顔で固まってしまった涼子に、僕は何も言わずに背を向けて走り出した。全ては終わったのだ。もう、言うことはなにもない。

その「愛」と向き合う―――。

別れの夜、スマホの電源を切ったまま千葉の実家に泊まった僕は、翌日の土曜、朝イチで携帯番号とメルアドを変え、LINEにおいては涼子をブロックした。

ただ、涼子の動きは非常に素早く、翌日曜日の夜、月曜の仕事に備えマンションに帰ってみれば、ドアの前に数時間も座り込む、冷え切った彼女を見つけたものである。

その日、夜を徹して、涼子は大泣きしながら自分の過去と素性を全て話してくれた。

  • 大学時代、友人に誘われて、出会い系で援助交際を何度も経験したこと。
  • その時、お客として出会った既婚者を好きになってしまい、結局金銭抜きの不倫の関係が始まり、3年間もて遊ばれたこと。
  • 彼と別れて以降スッパリ援交はやめたものの、浪費がたたってカードの返済に困り、派遣と風俗を並行して続けていたこと。
  • ただ、僕と出会う頃には返済も終わり、風俗はすっぱりとやめており、あの日は大口の、何度も助けてもらったお客が最後に1度というので、退店の挨拶、画像やプロフを消す等のお願いを兼ねて、お金目当てに出勤してしまったこと。
  • そしてその日稼いだお金で、僕の部屋の洗濯機を新調しようと思っていたこと。

そこまでの事情を聞き、結局僕は涼子を許すことにした。北の国からにおいて純がしゅうの過去を受け入れた時、田中邦衛は「誰にでも汚れはある、お前にもあるだろう?」と言ったではないか?

そう、僕は一生、しがない工員だ。

情けない過去なんぞ、掃いて捨てるほどある。そんな何者でもない情けない男に、彼女がこの半年間くれた幸せを考えてみるといい。

人はどこでだって、やり直せばまっさらの新品だ。僕は、涼子を愛してるんだ。

その夜、僕は何度も何度も涼子を抱き、その都度、彼女の中に果てた。

やはり最高だ、最高の女だ。

こんな「愛」は、どうだ―――――?